カテゴリー別アーカイブ: 小説

「室内」(8)

考えてみるとわたしはまだ院磨神社に行ったことがない。そこで信二さん宅を後にすると鎮守の杜に足を向けた。 盆地の中の森なのでこじんまりとしている。参道に沿って歩いた。現れた院磨神社は瀟洒な造りで、彩色のない材木の古びた肌理 … 続きを読む

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「室内」(7)

結の人々は保守的という樹里さんの話が頭にあったので、やしろ前の敷地に入るときには少し緊張した。しかし、玄関に出てきた信二さんに意固地な印象はまったくなかった。わたしの唐突な訪問をいぶかる様子もなく、この地ですでに会話した … 続きを読む

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「室内」という作品について

拙作「室内」が盛り上がっている(脳内評価)。残念ながら、明日は所用でたぶんブログを更新しないので、代わりに余計な間奏を書いておく。「室内」のラストはまだ書き終えていないが、すでに完成している。あっと驚く結末が待っており、 … 続きを読む

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「室内」(6)

じっさいにこの目で見たのだし、それは女の姿だったのだから、わたしに恐怖の感情など生じるわけがなかった。女が実物なら早く戻ってほしい。そうでないならからくりを暴くまでのことだ。わたしは女の残り香でもしないか、空のベッドをく … 続きを読む

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「室内」(5)

甚五朗さんにはまだいろいろ尋ねてみたいことがあった。しかし、時間も遅くなったし、すでにお話もお酒もたくさんいただいている。おいとまする頃合いだと思って、そう言った。甚五朗さんは、 ――今夜は院磨にお泊りですか。 ――はい … 続きを読む

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「室内」(4)

甚五朗さんはコップの酒を一口飲んで言葉を継いだ。 ――院磨のいわば開祖となる女はこの地で娘たちを出産する。また開祖の夫婦につき従って移り住んだ者どもの間にも子ができる。従者の子らは年頃になればおのずと結ばれ合ったけれど、 … 続きを読む

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「室内」(3)

一風呂浴びてさっぱりすると、わたしは部屋に戻った。バックパックからゴーグル(空間解析とヴァーチャルヴィジョン用)を引っ張り出してかける。室内を解析すると、プライベート・シールドによる保護に問題はなかった。これは外部からの … 続きを読む

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「室内」(2)

樹里さんの店に戻った。梨を渡すと、 ――甚五朗さん、あなたのことが気に入ったのね、 と言う。甚五朗さんというのは管理人の名らしい。わたしはサンドイッチとコーヒーを頼んだ。遅い昼食である。 ――みなさん、轟という姓なんです … 続きを読む

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「室内」(1)

約束のない一人旅の気儘さで、車窓から見える夏の木立に見とれたりうたた寝したりして過ごしていると、向かいあって座っていた七十代くらいの品のよい女性がお茶を奨めてくれた。ありがたくいただくことにする。彼女はポットに付属のコッ … 続きを読む

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『七月』

『七月――記憶の襞をめぐる七つの物語』が完成しました。ひと月をかけて書き下ろした二百四十枚ほどの小説です。連作形式を取っており、どれから読んでいただいてもかまいませんが、「廃市にて」はできれば最後にお読みください。 全作 … 続きを読む

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