カテゴリー別アーカイブ: 小説

「廃市にて」(5)

攻殻酵素の分泌回路を一時停止してリアル安酒の盃を重ねたおかげで、ポールと胡蝶は互いに胸襟を開いた。短期滞在者には稀なことにアキバでなくこの新宿に宿を取り、ゴールデン街を気に入って通っている上、いまどき自分でカメラを回すと … 続きを読む

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「廃市にて」(4)

新宿ロケ開始から十日目の仕事も無事に終わり、翌日からクルーはそろって二日間休むことになった。のんびりした後、また十日ほど撮影して帰国する予定だ。 ポール・デュカスはそれまでも新宿に滞在し、撮影が終わるとデジタル一眼レフカ … 続きを読む

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魔法使いの弟子

拙作「廃市にて」はまだ続くが、明日はお休みするので、間奏を一つ。「廃市にて」の撮影監督の名“ポール・デュカス”は、有名な作曲家に敬意を表して使わせてもらっている。この名を選んだ理由は(3)のエピソードの通り、「魔法使いの … 続きを読む

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「廃市にて」(3)

トマは三テイク目でオーケーを出した。旧都庁舎のシーンの最初のテイクがうまく撮れて、監督は満足そうである。ランチタイムになり、ケータリングを頼んでおいた都議会議事堂跡にクルーが集まって乾杯していると、予報の通り雨が降ってき … 続きを読む

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「廃市にて」(2)

撮影監督を引き受けたとはいえ、ポールは監督トマの構想と演出に惹かれてはいない。今作に参加した理由は、ひとえに朽ちゆく新宿を見たかったことにある。 どちらかと言えばポールは古いタイプのカメラマンである――自分でカメラを回す … 続きを読む

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「廃市にて」(1)

二十一世紀後半のある時期まで、旧東京に新宿という大都会があった。地下道から高層階、通りからビルの奥に至るあらゆるところに、モダンな都市につきものの襞を持っていた。それらがないと自分の呼吸が止まってしまうかのように、新宿は … 続きを読む

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音律をつくる

「五十三音」の冒頭にある音律の話、あれだけではよくわからないというかたがおられるかもしれない。ちょっと補足しておこう。スマホやタブレットには無料のキーボード・アプリがあって、鍵盤をタッチすると音が出るので、そういうものを … 続きを読む

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「五十三音」(4)

どこでもドアというのは、物質の構成を分析してその情報を電送するインポーターと、受け取った情報にもとづいてその物質のダブル(分身)を作成するエクスポーターを組み合わせたシステムである。どこでもドアを開くと、そこにはインポー … 続きを読む

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「五十三音」(3)

捜査活動専用ネットワークから羽鳥警視に緊急連絡が来た。今夜の被害者のライフネット接続データを分析したところ、以下の経過が明らかになったという――被害者は九時二分まではダイレクト・モード、LAN双方で接続しており、それまで … 続きを読む

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「五十三音」(2)

現場は山中湖畔のコテージだった。直径約十メートル、頂点の高さ約五メートルほどのミニ・プラネタリウムのような円形の建物が三つ、互いに一本のパイプのような通路で結ばれている。通路にも建物にも窓はなく、通路の一つにドアと三段の … 続きを読む

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