レグルス(ターナー、1828)

ターナー、1828年作品。http://www.turner2013-14.jp/feature/index4.html

ローマの執政官マルクス・アティリウス・レグルスは第一次ポエニ戦争の名将である。陸戦の雄ローマに対し、カルタゴは海戦において圧倒的な優位に立っており、ポエニ戦争の雌雄は容易に決しなかった。海戦での勝利を狙い、ローマ側は奇策を講ずる。カラスの嘴のような鉤を先端につけた吊り橋を自国軍艦に装備させ、敵艦にその吊り橋を渡して陸戦に慣れた兵士を送りこむというものだ。この計略によってローマは海戦でも勝利を収める。その後のローマ軍によるアフリカ侵攻を指揮したひとりがレグルスである。

彼の指揮によって窮地に立たされたカルタゴは、一度は講和を求めるものの、ローマが突きつけた屈辱的な条件を飲むことをよしとせず、徹底抗戦に出る。レグルスは敗戦し、捕虜となる。その後カルタゴはローマに使節を送り、レグルスを同行させる。カルタゴに有利な講和が成れば彼をローマに帰還させるというのが、同行の条件であった。しかしレグルスは元老院に対し戦争の継続を進言、その上カルタゴとの約束を果たすと言って使節とともに敵地に戻ってしまう。彼を待ち受けていたのは過酷な拷問による死であった。瞼を切り取られた上、地中海の眩い陽光の下に引き出され、彼は失明したと言われている。

ターナーのこの作品は、レグルスが最後に見たカルタゴの情景を描いている。光の画家ターナーが選んだ恐るべき画題は見る者の瞳への挑戦でもある。

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