Staub, Staubfaden

Die Niemandsrose”の中核をなす“Psalm”のキーワードは Staub(ほこり、ちり、花粉)である。この語は最終連で Staubfaden(花糸)という語に転じて再び現れる。「花糸」とはおしべの葯(やく)を支える糸状の柄のことらしい(ググったまま)。既存の邦訳では、この Staub に関する訳注が見られないのが残念なので、原文を掲げておく(出典=『全詩集』Suhrkamp)。

Niemand knetet uns wieder aus Erde und Lehm,
niemand bespricht unsern Staub,
Niemand.

Gelobt seist du, Niemand.
Dir zulieb wollen
wir blühn.
Dir
entgegen.

Ein Nichts
waren wir, sind wir, werden
wir bleiben, blühend:
die Nichts-, die
Niemandsrose.

Mit
dem Griffel seelenhell,
dem Staubfaden himmelswüst,
der Krone rot
vom Purpurwort, das wir sangen
über, o übar
dem Dorn.

冒頭は「だれでもないものがまたわたしたちを土と粘土からこねあげる/だれもわたしたちのちり(Staub; 後続の詩句との関連で「花粉」の意味も持つ)については話し合わない/だれでもないものが」という内容である。最終連がMitから始まるのはとても重要で、ここでは「茨の上でわたしたちが歌った真紅の言葉Purpurwortの、紅の花冠」が「花柱Griffel」および「花糸Staubfaden」とともにあった、と歌われている。そしてこの「紅の花冠 der Krone rot」こそが「だれでもない薔薇 Niemandsrose」に他ならない。訳出は困難であるのを承知の上で言うが、最終連のMit は、たとえば「そして」などと訳してははどうだろうか。
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