アーノンクール、レオンハルト、ギレスベルガーらによるJ・S・バッハ『ヨハネ受難曲』(1965年録音)のCD化(2008年)

アーノンクール、レオンハルト、ギレスベルガーらによるJ・S・バッハ『ヨハネ受難曲』(1965年録音)のCDを聴いた。デジタルリマスターが自然で、コーラスの各声部の分離がよいし、通奏低音(レチタティーヴォとアリアではチェロまたはガンバをアーノンクール、オルガンをレオンハルトが担当)もくっきり聴こえる。エヴァンゲリストのエクヴィルツ、イエスのヴァン・エグモント(32番のコラールつきのアリア“Mein teurer Heiland”も彼が歌っている)の歌唱も、アナログディスクをよいコンディションで聴くときのように伸びやかに響く。

もともとの演奏がとてもよいので、CDで聴いて評価が変わることはないが、格段に聴きやすくなったことは事実だ。わたしのアナログ音源にはところどころノイズが入るため、ヘッドフォンを通して聴くのは困難だった。わたしはこの演奏では、やはりレチタティーヴォとアリアの完成度がすぐれていると思う。その中のいくつかを選択して時にはヘッドフォンで聴きたかったのだが、CDのように即座に曲にアクセスしにくいという難もあった。2008年に発売されたソフトについて今更こんなことを書いてもしかたないけれども、昨夜通して全曲を聴き終えたときには感動を新たにした。

第2部前半において、エヴァンゲリストの語り、イエスとピラトの台詞、そして激した民衆の叫びが交互に重なる箇所での音楽の展開は、おそらくアーノンクールのディレクションによると思われる。コーラスの歌唱のリズムの緊迫感とアーティキュレーションの切れの良さは彼の指揮姿を髣髴させる(じっさいには合唱からレチタティーヴォ、アリアのすべての通奏低音を彼が担当しているので、オーケストラとコーラスの前に立って“指揮”していたのはギレスベルガーであろう)。いっぽう19番(バスのアリオーソ)と20番(テノールのアリア)、そして32番(コラールを伴うバスのアリア)などでは、ソロを含む各演奏者が端正な室内楽的共演を行なっている。第1部、第2部の終結コラールに代表される、この受難曲の中核をなす美しいコラール群でのコーラスの見事さはやはりギレスベルガーの導きによるものだろう。そして何と言っても、語りと音楽の一体化という点においてバッハの天才を証する各レチタティーヴォにおける、エクヴィルツ、アーノンクール、レオンハルトの協働が素晴らしい。この演奏は彼らの共同制作というのが正当な評価であろう。

 

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