公理的集合論以前の熱狂について(Ch.S.パースの「関係項の論理学」に寄せて)

Ch.S.パースの「関係項の論理学」はとにかくすごい論文である。ハーヴァードでの講演に基づく『推論と事物の論理』の中核をなすこの第三論文は、パース哲学の土台となる三項のみならず、記号論理学の先駆をなす着想を独自の記法(存在グラフと事物グラフ)によって提示する。さらに注目すべきは、無限に関する公理的集合論成立以前の形而上学的夢想が展開されていることで、ラッセルが注目したのも当然である。

ラッセルのタイプ理論も、同時期に確立された公理的集合論も、パラドックスを回避するための理性的な手段であり、この意味でアンチノミーを回避するために取られたカントの策略と同型である。わたしがパースに惹かれる理由の一つは、こうした策略に“先立つ”熱狂を目の当たりにできることにある。

カテゴリー: ナマケモノ, 哲学   パーマリンク

コメントは受け付けていません。