『青白い炎』149行および597-608行へのキンボートの注釈について

岩波文庫版『青白い炎』刊行への捨石としてこのブログはさまざまな寄与とお節介をしていくことになっている。これはその一環である。

キンボートの注釈の中で、チャールズ王物語を形成するできごとの重要性に比して、彼の記述が極端に曖昧になる箇所が、149行および597-608行への注釈である。チャールズ王の逃避行の最大のヤマ場、マンデヴィル山の斜面を下り、湖畔で自身の分身を見るくだりだ。この箇所はキンボートが王と入れ替わった可能性を示す、キンボートの語りの要点である。434-435行への注釈(リヴィエラでの王と后の再会についての記述、これを聞いたシェイドの感想「大変結構なお話でした、チャールズ」、およびキンボートの告白「あなたの詩が完成され次第、つまりゼンブラの栄光があなたの詩のなかに同化され次第、わたしはあなたの心を完全に安らかにさせるある窮極的真実を、ある途方もない秘密をあなたに漏らすつもりでいるのですよ」からなる)に含まれるキンボートの「窮極的真実」とは、彼がチャールズ王であるということではなく、おそらく彼が王殺しの下手人であり、王と入れ替わった当の人物だということなのだろう。

しかし、読解の可能性を勝手に封じては“捨石”の名がすたる。149行および597-608行への注釈をどう読むかについて、ここでは次の3つの例をあげておきたい。

1) 王が見た幻はブロッケン現象である。

2) 王の分身である赤い帽子の長身の人物は、王を守るため密かにその後をつけていたオドンに他ならない。

3) 王が見た赤い帽子の長身の人物はキンボートである。キンボートは長年チャールズ王の影として主に王の文学的関心を支えた従僕であり、王の脱出に随行していた。そして逃避行の途上、疲労困憊した王をマンデヴィル山の斜面で殺害し、王と入れ替わった。

わたしが取るのは3番目の読みである。

 

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