vat

ヒラリー・プリントン Hilary Puddington のSF短編「税込み脳価格 Brain Price Including Vat」(『異星、尻、溺死』所収)は、付加価値税(消費税)が45%を越えてしまった近未来社会における臓器再生を扱うコミカルな作品だ。
興味深いのはある個体の、任意の時点での臓器の複製と移植ができるという設定で、大脳ももちろん例外ではない。『ドウエル教授の首』の設定は空想上のものではなくなり、それどころかA氏のある時点における脳みそをB氏に移し替えることなども可能である。本作にはこの技術を応用する様々な例が開陳され、なかでもおもしろいのは、12歳時点での自分の脳のコピーを移植されたクローンと現在の自分とが語り合う場面。この社会の人々は12歳に達してから年に1回、自分の脳を電子的に複写しておくことが認められており、後年それらのうちのどれでも実際の臓器として再生できる。ただし、脳を移植されたクローンを放置すると独り立ちしてしまい、脳的に同一の異なる人格が多数存在することになりかねないから、移植後、“本人” が必要と考えた用途(使用方法の範囲と内容は法によって厳格に管理されている)が済んだ後、クローンは速やかに消滅させられることになっている。ところが、12歳時点での自分と対話した24歳の主人公は、12年前の “自分” の語る内容と現在の自分の記憶の落差に愕然とし、クローンおよび移植された脳の温存を不法に図る。
この時立ちはだかるのは付加価値税の壁なのである。プリントンの面目が躍如とするのはまさにここからである。ネタバレは禁物であろう。

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