ファスビンダー『愛は死より冷酷』(1969)

『愛は死より冷酷 Liebe ist kälter als der Tod』 の冒頭に、「ランツベルク通り沿いをドライブするシークエンスはジャン-マリ・ストローブのおかげで利用できた(注)」とあるのは、ファスビンダーがヒモの役を演じた『花婿、女優、そしてヒモ Der Bräutigam, die Komödiantin und der Zuhälter』(1968)冒頭の長いトラベリングのことを指している(なぜかJ・S・バッハの、昇天祭か復活祭のどちらかのオラトリオが流れる)。ランツベルク通り(ミュンヘン)を検索していたら、Fassbinder Foundation のサイトに次の記事を見つけた。最後に引用されているペッツォルトのコメントを読んでみてください。http://www.fassbinderfoundation.de/congratulations-to-jean-marie-straub/?lang=en

なおペッツォルトの元記事(ドイツ語)はここで読めます。http://www.tagesspiegel.de/kultur/rainer-werner-fassbinder-mein-fassbinder/6730242.html

ファスビンダー映画祭2014はいよいよ6月21日から(オーディトリウム渋谷)。『愛は死より冷酷』は21日と25日に上映される。今回の特集ではファスビンダーの初期作品が多く取り上げられることも見どころのひとつであるが、残念なことに1作品が1―2回しか上映されないというタイトなスケジュール。がんばって通いましょう。

ところでこれはツイッターに上がってきた未確認情報――ファスビンダー特集に続いて同じくオーディトリウム渋谷にて、ほんとうに久しぶりにダニエル・シュミット特集が企画されている模様。とってもうれしいです。

注 “wurde von Jean-Marie Straub zur Verfügung gestellt” 「ストローブによって提供された(ストローブが自由な使用を許してくれた)」という意味。わたしが最後に『花婿、女優、そしてヒモ』を視聴したのは、2010年12月、アテネフランセ文化センターでのストローブ=ユイレ特集においてであり、記憶が曖昧なのだが、『愛は死より冷酷』の夜の通りのトラベリング(娼婦ヨアンナを探してウリ・ロンメルが車をゆっくり進めながら通りを見るというシチュエーション)と、『花婿、女優、そしてヒモ』冒頭のシークエンスとは完全に同じものではないように思う。しかし、わざわざ映画の冒頭に「ストローブ提供」と明記されている以上、使用された箇所に相違があるとしてもフッテージ自体はストローブの制作によるものなのだろう。なおペッツォルトは件の記事を記憶にたよって書いている。『愛は死より冷酷』のトラベリングはたしかに当初は沈黙の中で持続するが、やがて音楽が被る(音楽はペーア・ラーベンとホルガー・ミュンツァー)。

【追記】『愛は死より冷酷』は、クロード・シャブロル、エリック・ロメール、ジャン-マリ・ストローブ、そしてダミアーノ・ダミアーニの傑作『群盗荒野を裂く』のふたりの主人公に捧げられている。『ファスビンダー、ファスビンダーを語るⅠ』のなかにも、ファスビンダーとウリ・ロンメルが当時この映画に夢中になっていたという記述がある。ファスビンダー好きのみならず、映画好きには必見の作品だ(『群盗荒野を裂く』のモチーフのいくつかを『愛は死より冷酷』は借用している)。もうひとつ、トルコ人殺しの場面で巻き添えにされて撃たれてしまうカフェのウェイトレスの名はErika Rohmer である。ロメールに捧げておいてそれはないだろうと思わなくもない。

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