この映画、芦川いづみファンからはどう受けとめられるのだろうか。岡本太郎も出ているし、一人称の声さえなければわたしにはおもしろい。
中平の『誘惑』そのものを取り上げるわけではない。『あの日のように抱きしめて』の周辺を探る途上、フランジュ『顔のない眼』(1960)をBlu-ray(ものすごい高画質)で見た。クリスティーヌ(エディット・スコブ)が少しの間顔を取り戻すところで、『誘惑』の左幸子の卵パックを思い出してしまった。パックされた女性の顔面を撮る試みが、TVドラマなどを除いて他にあるのかどうかは知らない。『顔のない眼』のスコブは、マスクのとき以上に素顔が凍りついているが、左幸子の卵パックもこれに負けていない。動きも自動人形のようである(スコブの、両手をひらひらさせながら歩くときの悲しげな姿には太刀打ちできないけれど)。ちなみに顔面パックの演出は左=中平の方が2年ほど早い。