再びジョット

「ノリ・メ・タンゲレ(わたしに触れるな)」の、スクロヴェーニ礼拝堂の作品とアッシジの聖フランチェスコ聖堂のそれを比べてみよう。

〈ノリ・メ・タンゲレ(聖フランチェスコ聖堂)〉

〈ノリ・メ・タンゲレ(スクロヴェーニ礼拝堂)〉

スクロヴェーニ礼拝堂の作品がジョットの手になることはたしかだが、これより先に制作された聖フランチェスコ聖堂版の作者はわかっていない。たしかに後者の人物の顔貌と身ぶりの表現はまだ硬く、中世の様式を留めている。しかし、これがジョットの作品でないとするなら、スクロヴェーニ版の構図(特にマグダラのマリアとイエスの配置)は露骨にフランチェスコ版に倣ったものとなってしまう。両者はともにジョット作で、両者の違いは彼自身の表現の展開と見た方がよいように思う。

聖フランチェスコ聖堂のフレスコでは、この教会ゆかりの聖人の生涯を描いた連作が有名だが、同じ主題を描いたジョットの作品は、フィレンツェのサンタ・クローチェ教会にもある。こちらのフレスコは状態がよくないが、しかしおそらく壮年期以降の、ジョットの到達点を見て取ることができる。

〈聖フランチェスコの死〉

複数の人物の配置とそれぞれの身ぶりの表現がみごとだ。中央の絵の具の剥離は残念である。横たわる聖人の頭部をアップにしてみる。

〈聖フランチェスコの死(部分)〉

スクロヴェーニ礼拝堂の壁画群とは人物の輪郭と表情の描き方が異なり、線の強さに特徴がある。背景と上衣の色彩がより鮮明だったら、盛期ジョットの様式がもっとよく見て取れたはずである。

同じくサンタ・クローチェ教会の別の礼拝堂にあるジョット後期のフレスコを見てみよう。洗礼者ヨハネの生涯を描いた連作の一つで、特に空間の構成が優れているが、こちらも褪色が激しいため画像ではめったに紹介されない。

〈洗礼者ヨハネの誕生と命名〉

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