映画は動画だから、そこに静止画が映るとどきっとする。レネ、ロージー、タルコフスキーといった例をわたしは思い浮かべている(夜と霧、銃殺、僕の村は戦場だった、など)。
映画でこれと似た感触を抱かせるものに朗読(場面)がある。台詞の朗読は大根役者の証なので、俳優が朗読しているところを映す例は少ない(ナレーションは別)。昨日わたしは森永健次郎『真白き富士の嶺』(1963)を見た(神保町シアターの特集「恋する女優 芦川いづみ」)。吉永小百合と芦川いづみがそれぞれ妹と姉を演じている。前者が夭折してしまう話で、その一環として次のような設定があるーー吉永のもとに頻繁に手紙を寄こしていた文通相手が、彼女の回復は不可能と承知した上で絶縁したのを知った芦川が、その男を装って改心の手紙を書き、妹に読み聞かせる。どう考えても無謀な試みで、実際あっさり失敗する(手紙を書いたのが芦川だとすぐバレる点で)。しかし姉が読む手紙の文面と(たぶん)その声を、妹は涙ながらに聞く。芦川の朗読は比較的長尺で、いつもの彼女の台詞回しとは異なったところもあり、非常に興味深いショットだ。おそらく制作者の泣かせどころは、この後の姉妹の抱擁から吉永の死に至る箇所なのだろう。でもわたしには芦川の朗読がよかった。
ここでストローブ=ユイレを引き合いに出すのはよくないとは思うが、映画の中で基本的に朗読ばかり撮(録)っている彼らはすごい。
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