“Lola Montès” のデジタル・リマスター (2006-08) について

The Criterion Collection, “Lola Montès” 所収のリーフレットに、「修復とデジタル化について」という、本作品のデジタル・リマスターをめぐる詳しい説明がある(“Lola Montès” は、マックス・オフュルスの遺作『歴史は女で作られる』の原題)。この資料から、2006-08年のリマスターを上映時間・色彩・音声に関して完全版と呼んでよいことが確認できた。英語版Wikipedia “Lola Montès” の、オリジナル版の長さを140分とする記述(9/22現在)は誤りである。以下リーフレットの解説の一部を訳出する。

「『ローラ・モンテス』は1955年12月22日、パリで公開された。鳴り物入りで莫大な製作費が注ぎ込まれ、三つのヴァージョン(仏、独、英語版)が撮影されたものの、世評は悪く、興行的に惨敗した。三種のオリジナル・ネガとともに、フィルムを再編集から守ろうとするマックス・オフュルスの戦いは奏効しなかった。フランス語版のみ、最終的に三つの異なるヴァージョンを持つことになる。(1) 55年12月から上映されたオリジナル・プレミア版――多言語音声、114分、(2) 56年2月版――オリジナルの多言語音声がすべてフランス語に吹き替えられ、四つのシークエンスを削除した110分版、(3) 57年短縮版――物語を時系列に並べ替え、サーカスのシークエンスを短縮して説明のナレーションを添えたもの。
1966年、映画プロデューサーのピエール・ブロンベルジェ(Pierre Braunberger)は彼の製作会社、レ・フィルム・ド・プレイヤード(Les Films de Pléiade)のために『ローラ・モンテス』の権利を獲得し、この作品の現存するすべての素材の買収を進めた。67-68年、彼は90分版からの修復に取りかかる。撮影監督クリスチャン・マトラの助言によって、オリジナル・ネガからカットされたフィルムを求めてヨーロッパ中の現像所をあたり、果てはポジの断片からデュープ・ネガを起こした。当時のフィルム修復の水準ゆえ完全な結果は得られなかったが、ブロンベルジェはその110分ヴァージョンを1969年にフランスとアメリカ(第6回ニューヨーク映画祭)でプレミア公開した。同年全米公開され、準ディレクターズ・カットの初配給となった。しかしこの忠実な修復の試みによっても、『ローラ・モンテス』はオリジナルの色彩・フォーマット・サウンドトラック・完全な上映時間を取り戻すことはできなかった。
ブロンベルジェは1990年に没したが、2006年、彼の娘ロランス(Laurence)はトムスン財団、仏米文化基金、シネマテーク・フランセーズの援助を受けて、再び『ローラ・モンテス』修復に乗り出した。
トム・バートン(Tom Burton)監修のテクニカラー社の技術者たちは、不完全なオリジナル・ネガ、ラフ・カット、オリジナルのYCMセパレーション(注)、それに脆く退色した試写用プリントをデジタル化した。さらに作品はデジタル修復を施され、オリジナル素材に傷みを与えることなく、1955年プレミア版の長さを取り戻した。」(出典:About the restoration and transfer “Lola Montès”, The Criterion Collection, 2009)

訳注 YCMセパレーション カラーフィルムをイエロー、シアン、マゼンタ三色に分解して白黒ネガ上に記録したもの。白黒フィルムはカラーフィルムに比べて耐久性がよいため、保存用に用いられる。

【訂正】 このエントリーのアップ当初、ブロンベルジェを55年プレミア版のプロデューサーでもあると勘違いし、誤ったコメントを添えてしまった。彼は69年修復版のみのプロデューサーである。当該コメントは削除した。(2015/9/22)

【更新】 2015/9/29  訳注の「YCMセパレーション カラーフィルムをイエロー、シアン、マゼンタ三色に分解して白黒フィルム上に焼いたもの」を「白黒ネガ上に記録したもの」に訂正。「焼いた」ではプリントと混同されるおそれがあるため。YCMセパレーションは褪色しやすいオリジナル・カラーネガを代替する保存用白黒ネガである。

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