パンチとジュディ(1937)

『火よ燃えろ!』、『ビロードの悪魔』といったカー後年のいくぶんドタバタした歴史物にはこの作家ならではのストーリーテリングの面白さがあるので好きだ。実は『一角獣殺人事件』、『パンチとジュディ』というカーター・ディクスン名義の第五作および第六作は初めて読んだ。ディクスン名義第二作『黒死荘殺人事件』でヘンリー・メリヴェールの部下として初登場したケンウッド・ブレイクが、『一角獣』と『パンチとジュディ』では情報部の美しき(かつおてんばの)同僚イヴリン・チェインとともに、謎解きというより謎の混迷を深める活劇を見せ、『一角獣』でも『パンチとジュディ』でもそれぞれ100頁程度の脱線を演出する。が、この脱線も物語の重要な伏線だったことがついには明らかになる。

若いカップルが若干ドタバタしながらも物語を引っ張り、ついでに結婚して続く『ユダの窓』にも登場するというシリーズ展開になっている。初期カーター・ディクスンの以上四作は、特に『黒死荘』と『ユダの窓』のトリックが有名すぎるほど有名だが、後期の歴史物を先取りする物語の構成と展開にむしろ興趣を覚える。

ついでにパンチとジュディのパンチはコメディア・デラルテ(コンメディア・デッラルテ)のキャラクター、プルチネッラに由来することも初めて知った。ストラヴィンスキーの組曲でも知られる道化師だ。

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