『孔雀の羽根』(1937)

タイトルがやや地味なことがたたって読み逃していた。とてもおもしろい作品である。

1 『眠れるスフィンクス』(1947)の「殺人ゲーム」の原型が登場する。『孔雀の羽根』でヘンリー・メリヴェール卿は、「殺人ゲーム」について次のように指摘している(邦訳p.147)。「わしがいつも気づくことが一つある。あのゲームで殺人者になる者は、自分が好きな相手か、ごく親しい相手以外はけっして殺さんのだ」。この経験則がはたして『眠れるスフィンクス』の事例にも妥当しているかどうか、カー好きの読者諸氏はぜひご自身で確かめてみてください(『眠れるスフィンクス』の方の探偵はギデオン・フェル博士なので、HMの経験則と一致しなくてもかまわないといえばかまわない)。それにしてもイギリス人の殺人ゲーム趣味が、その後の日本のアニメおよびゲームに影響することになろうとは、さすがのカーも想像できなかっただろう。

2 『白い僧院の殺人』における有名な密室講義に修正が加えられている(邦訳p.295〜)。これはカー・マニアなら見逃せない展開である。ミステリにネタバレはいけないので、この事実だけ指摘しておく。

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