アーノンクールのシューマン『ゲーテ、ファウストからの情景』

アーノンクールは1975年にJ・S・バッハの『ヨハネ受難曲』と『マタイ受難曲』でロイヤル・コンセルトヘボウにデビューした。その後もこのオーケストラとは密接な関係を持ち、2000年には名誉客演指揮者となる。コンセルトヘボウにおけるシューマン『ゲーテ、ファウストからの情景』の公演は2008年4月に行われた。その模様を収めた2枚組のCDは、2000年代にアーノンクールが残した数々の名演奏の中でも傑出している。

堅固なリズムの上に各声部の旋律をくっきりと際立たせながらテクスチュアを築いていくアーノンクールのような指揮者にとって、ロマン派初期の作曲家、特にシューマンのオーケストラ作品はぴったり合う(この作曲家のピアノ曲や歌曲ではリズムの堅固さとか各声部のコントラストなどの表現の優先順位は低いかもしれないが、オーケストラ作品に限ってはそうではない)。演奏機会が少ないシューマン晩年のこの傑作は、アーノンクールによって取り上げられるのを待っていたような作品である。

ライブ収録だが、きわめて完成度が高い。アーノンクールのエネルギッシュでありながら覚めた指揮ぶりが目に浮かぶ演奏である。シューマンのこの作品自体について非専門家のわたしにはきちんとしたことは言えないのだが、ハイドンが最晩年に自分の様式を集大成するように書いた『天地創造』に匹敵する、シューマン晩年の孤高の作品だと思う。第一部を締めくくる弦の響きは特に美しい。

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