『鬼軍曹ザック』

このフィルムを見ると、フラーの作品は全部まとめて一本の映画になっているのだなと気づかされる。ファーストショットからして“フラー”のサイン入りである上に、エンドマークの代わりに観客が目にするのは「この物語に終わりはない」という宣言である。ザックと行動をともにするのは朝鮮戦争で一家を皆殺しにされた韓国人少年、日系二世、黒人衛生兵、しょうこう熱のために頭髪が抜けてしまった新兵、だれとも口をきかない兵士、元徴兵忌避者、ろくでなしの中尉であり、例の通りマイノリティとはぐれ者を集めている。彼らが基地にした寺は北朝鮮の部隊に包囲され、応戦するザックは大仏の肩を借りてマシンガンを乱射する。弾薬が尽きると放心状態になり、突如Dデイの悪夢がフラッシュバックして「いざノルマンディ」と言い出す始末(『最前線物語』のDデイの場面に、「この海辺には二種類の兵士たちがいる。死んだ者と死にかけた者だ。死ぬなら陸に上がって死ね」と号令する大佐のエピソードが出てくるが、『鬼軍曹ザック』において、主人公はまさしくオマハ・ビーチで大佐のこの言葉を聞いたという設定であるーーこの作品も『最前線物語』の伏線なのだ)。ザックは銃弾を浴びたかのようにぶっ倒れてしまうので、こいつ死んだか、それにしても主役がこんなにあっけなく死ぬのか、さすがはフラー、などと思っていると、次の次の次くらいのカットは(本当はもう少し先だが)、生き延びた兵士たちの会話であるーー「ザックは無事か?」「ああ。ただアタマが痛いそうだ」。

この調子なのに「この物語に終わりはない」とかよく言うよな、フラー。まだご覧になってないかたは恵比寿に行くなり自分で買うなりネットで見るなりしてください。

【メモ】お坊さんはみだりにいじらないほうがいい。ろくでなしの中尉は寺に入った直後、「この大仏には手を触れるなよ。われわれがここを出るときは、やってきたときと正確に同じ状態にしておくことだ」と訓示を垂れる。もちろんフラグである。ザックのおかけで大半の仏像は破壊されてしまうのだから。すまなかった、僧侶。

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