『牯嶺街少年殺人事件』のサウンドトラック

至る所に細やかな仕掛けがあるので、映画館でそれらをすべて把握するのは困難かもしれない。

ヒロインの少女が病気の母とともに親戚の家に戻ってくる場面で、すぐ近くのビリヤード場の前を通り過ぎて画面奥の石段を登っていく夜のショットがある(母子はちょうど自転車でやって来た主人公の兄とすれ違う)。どうやらビリヤード場より少し高台になったところが親戚の家の入り口らしい。例によって被写界深度の深いショットで、一度夜の闇に紛れた母子を、石段の途中で照らす明かりがとても美しい。

母子がやっかいになる親戚の家とビリヤード場とがどんな位置関係にあるのかははっきり描写されない。ただし、少女が洗い物をする少し後の朝の場面には、ビリヤード場を拠点にしているストリートギャングの下っ端(射撃練習場で主人公の少年と少女に絡んだチンピラ)が現れ、流し台の傍らで再度少女に絡もうとするので、二つの場所はごく近くにあるはずだ。

射撃練習場の場面で、少女はこの近くにかつて住んでいたと言うが、まさにその家に戻って来たのであろうことは、チンピラが絡む洗い物の場面で、ライフルの射撃音がパラパラと響いていることから推測できる。こういう音の処理が随所にあるため、クライテリオン版のソフトを繰り返し視聴すると発見がある。

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