ヴァン・デル・カンプ監修による新しい『スヴェーリンク鍵盤作品全集』

The Sweelinck Monument の一環としてGLOSSA レーベルからリリースされたスヴェーリンクの鍵盤作品全集(CD6枚)は、NM Classics レーベルの9枚組全集と並んで素晴らしい企画である。スヴェーリンク・モニュメントはオランダを代表するこの作曲家の全作品を録音するプロジェクトで、すでにヴォーカル作品を含めて完結している。

鍵盤作品全集はその第4集にあたる。監修者ハリー・ヴァン・デル・カンプの解説によると、この企画には当初グスタフ・レオンハルトも参加する予定であった(ふたりはJ・S・バッハのカンタータやパーセルの作品などの優れたレコーディングを残している)。しかし残念なことに2012年のレオンハルトの死によってこれは実現しなかった。その代わりに、このボックスの最後には1971年10月11日にアムステルダム旧教会(Oude Kerk)で行なわれたスヴェーリンク没後350年を記念する彼のコンサートから、ライナー・シュッツェのチェンバロを用いて演奏された2作品(「これは軍神マルスだろうか」のメロディーによる7つの変奏曲 SWWV 321 およびダウランドの「ラクリメ」によるパヴァーヌ SWWV 328)のライブ音源が収録されている。この企画のために使用を許された初公開音源である。

スヴェーリンクに寄せる音楽学者、演奏家としてのグスタフ・レオンハルトの熱意はよく知られている。きわめて貴重なレオンハルトの「新譜」と言ってよい。

本ボックスに収録されたほとんどの音源は2012―14年のものであり、レコーディングに用いられたオランダ各地のオルガンはすべてミーントーンで調律されている。前回の鍵盤作品全集にも加わっていたヴァン・アスペレンらも再び登場する。旧全集もまだすべては聴いていないというかたも多いとは思うが、こちらもお見逃しなく。

なおレオンハルトが弾いている「これは軍神マルスだろうか」のメロディーは17世紀初頭のフランスのシャンソンから取られている。フランス語の歌詞もブックレットに収録されてはいるのだが、ミスプリントなのか古い写本をそのまま使ったのか、意味が取れない箇所があるので、比較的新しいフランス語表記に直したものとその拙訳を載せておく。

Est-ce Mars le grand dieu des alarmes / Que je voy ?
Si l’on doit en juger par ses armes / Je le croy
Toutesfois j’apprends en ses regards / Que c’est plustot Amour que Mars.

わたしが目にしているのは/恐怖をもたらす大いなる神マルスなのか?
武具から判断すべきというなら/そう思う
でもわたしにはそのまなざしでわかる/軍神マルスというより愛の神クピドだと

カテゴリー: グスタフ・レオンハルト(Gustav Leonhardt), 音楽   パーマリンク

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