オリヴェイラ『フランシスカ』の手紙のエピソードについて

オリヴェイラ『フランシスカ』のストーリーの要所または転換点には手紙のモチーフが現れる。列挙すると、1) ファーストショットで読み上げられる、ファニーの母がジョゼ・アウグスト(以下J・A)の義姉に送った手紙、2) J・Aとマリアの関係を深める媒介(カミーロとの対話でJ・Aは、距離を置こうとして彼女に書き送った手紙の中で、マリアを「妹」と呼んだ結果、かえって彼女を引きつけることになったと報告する)、3) 「駆け落ち」の途上、ファニーが肌身離さず携えているJ・Aからもらった手紙の束、4) 「駆け落ち」後、ポルトで再会したカミーロが人を介してJ・Aに渡すファニーの手紙(彼女のサインはあるが、だれに書き送ったのか不明。J・Aとの交際について第三者に報告している。この手紙を読んだJ・Aは、たとえファニーと結婚しても愛することはできないと彼女に告げる。またファニーと謎の人物――スペイン人らしいという言及がある――との手紙のやりとりにはカミーロが関わっていたという噂も)、5) ファニーとJ・Aとの結婚後、マリアからJ・Aに送られた手紙(これをめぐって夫婦は激しく口論する。ファニーは手紙を読むがどのような内容だったかは作中で明らかにされない)。

19世紀を舞台にした小説が原作なので、あちこちで手紙が重要な役回りを果たすのはあたりまえのことかもしれない。それでも本作において手紙をめぐるできごとの描写が強い印象を与えることは間違いない――ファーストショットの手紙のことばの反復とそこに重なるパセティックな音楽、駆け落ちの途上、不安を隠せないファニーがたいせつに手にしている手紙の束、4)の手紙を突きつけられ、許してほしいと懇願するファニーの表情と身振り、5)の件をめぐっては、ファニーの足元にすがるJ・A(このショットから、彼のファニーに対する愛がけっして冷めてはいないことがわかる)等々。

 

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