サーク『丘の雷鳴』

基本的に修道院のセット内で撮られた室内劇。洪水によって避難してきた近隣住人と彼らを支える修道女の、数日間の生活が描かれる。本当は明日の刑執行が予定されていた死刑囚の若い女性が、手錠もかけられずにわずか二人の警官によって護送され、洪水のため修道院滞在を余儀なくされるというのはいかにも雑な設定だが、そのおかげで素敵なメロドラマが始まる。ただし、メロドラマとは言ってもヒロインであるシスター・メアリ(クローデット・コルベール)の媒介つき。ここが本作のとてもよい点だと思う。なぜかと言えば、洪水によって閉鎖空間となった修道院内で、延期された刑執行を待ちつつ、女性死刑囚がその恋人と二人だけでメロドラマするのは難しく、シスター・メアリがあれこれ余計な介入をしなければ話が進まないわけだが、彼女が介入するからこそサーク流メロドラマの仕組みが明確に示されるからである。自力で無実を証明するのはほぼ不可能である恋人たちは、シスター・メアリの助力にすがるが、修道女はこのため次から次へと障害に直面することになる。サークの後年の映画でも恋の成就を妨げるものの多くは旧弊な考え方から抜けられないコミュニティの住人たちだが、本作ではそういうコミュニティが自然災害時の閉鎖空間に凝縮しており、それがシスターの邪魔をする。カメラは修道院の内部空間をセットらしさがわかりすぎるように撮っているが、その抽象性がよい。塔の内部に入るのに普通のドアを開けるだけとか、ラストシーンの壮麗な階段をなぜもっと早く生かさないのかとか、余計な批評精神を持たずに見るのがコツである。たいへんよい作品だ。

カテゴリー: ダグラス・サーク, 映画   パーマリンク

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