「松本瑠樹コレクション ユートピアを求めて――ポスターに見るロシア・アヴァンギャルドとソヴィエト・モダニズム」展

松本瑠樹コレクション ユートピアを求めて――ポスターに見るロシア・アヴァンギャルドとソヴィエト・モダニズム」(神奈川県立近代美術館葉山館、2014年1月26日まで)に行った。すばらしい展示である。ロシア・アヴァンギャルドや革命期ソ連の美術または映画に関心のある方は必見だ。松本瑠樹氏個人のコレクションからこれだけ充実した、体系的展示ができるのは驚くべきことで、わたしたちは蒐集家・研究者としての氏の慧眼に感謝しなくてはならない。作品の保存状態はきわめてよく、一点一点の迫力に圧倒される。革命期ソ連において労働者、農民への直接的なアピールのためにポスターが果たした役割がいかなるものだったか(リシツキー、マレーヴィチ、マヤコフスキーらの10‐20年代の作品を見ることができる)、また20年代ソ連映画の黄金期――モノクロ・サイレントの時代――にステンベルク兄弟に代表される作家たちが生み出したカラーのポスターがどのように当時の人々に訴えかけたか(モノクロ映画の観客たちは、まず緻密に構成された美しい多色刷りのポスターに惹かれて映画小屋に行ったのだ)を教えられるだけでも貴重である。

この夏、ユーロスペースではレフ・クレショフが、オーディトリウム渋谷ではソ連映画が特集されたばかりである(わたしも足を運んだ)。長身のアレクサンドラ・ホフローワ(クレショフ夫人)が文字通り目を剥いて被告を断罪し処刑するあの『掟によって』のポスター(ステンベルク兄弟)も出展されている(やはりホフローワの“目力”を味わえる『あなたが知っている女』もお奨めである)。ステンベルク兄弟の作品では2m×2mを超える『ミス・メンド』(ヒョードル・オツェップとボリス・バルネットの26年作品)とやはり大作『十月』(エイゼンシュテイン)、ジガ・ヴェルトフの『第十一年』(異なる図柄で2作)、『カメラを持った男』(これも2作)などが目の前に存在することには驚いてしまう。今回展示されているステンベルク兄弟のポスターが紹介している映画のなかには、おそらくフィルムの方が現存しない作品もあるだろうから、これだけ多数のポスターが揃うのは貴重である。

葉山は遠いと思われるかたも当然多いだろうが、この季節、美術館を出てから見る海はたいへん美しい。展示期間中、エイゼンシュテインらの映画がプロジェクターで見られるのもうれしい(週替わりのようだから、上映作品については直接お問い合わせを)。

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