Schibboleth(Celan)

『敷居から敷居へ』(1955年)に収められているSchibbolethは、スペイン内乱とハプスブルク帝国の終焉に取材したもので(Doppelflöte は帝国のふたつの首都、ヴィーンとマドリッドを指す)、タイトルは旧約聖書で “エフライム人をギルアデ人と区別するために用いられた合言葉” というエピソードを指すヘブライ語に由来する。最終行の地名Estremaduraはスペイン内乱時の激戦地、最後からふたつ目の連に現れる“No pasarán” (「通すな」)はスペイン内戦時の共和国政府軍および国際旅団の呼び声である(出典=『改訂新版 パウル・ツェラン全詩集Ⅰ』, p214)。

Schibboleth

Mitsamt meinen Steinen,
den großgeweinten
hinter den Gittern,

schleiften sie mich
in die Mitte des Marktes,
dorthin,
wo die Fahne sich aufrollt, der ich
keinerlei Eid schwor.

Flöte,
Doppelflöte der Nacht:
denke der dunklen
Zwillingsröte
in Wien und Madrid.

Setz deine Fahne auf Halbmast,
Erinnrung.
Auf Halbmast
für heute und immer.

Herz:
gib dich auch hier zu erkennen,
hier, in der Mitte des Marktes.
Ruf’s, das Schibboleth, hinaus
in die Fremde der Heimat:
Februar. No pasarán.

Einhorn:
du weißt um die Steine,
du weißt um die Wasser,
komm,
ich führ dich hinweg
zu den Stimmen
von Estremadura.

(Paul Celan)

 

合言葉

ぼくの石たち、
格子のむこうで
大きく泣いた石たちともども、

やつらはぼくを
市の中央に、
ぼくがどんな誓いを立てることも拒んだ
旗が掲げられるその場所に
ひきずって行った。

横笛、
闇夜を貫く二重の横笛。
ウィーンとマドリッドの
暗鬱な
双生児の血の紅を想え。

お前の旗を弔旗にせよ、
想い出よ。
今日のため、そして永久に
弔旗にせよ。

心よ――
ここでもおまえの胸の内を明かせ、
ここ、市の中央でも。
それを、合言葉を、故郷の
異郷にむかって叫べ――
「二月。奴ラヲ通スナ」と。

一角獣よ――
きみは石たちのことを知っている、
きみは涙たちのことを知っている、
おいで、
ぼくはおまえを
エストレマドゥラの
あの声たちのところへ
連れて行こう。
(飯吉光夫訳『閾から閾へ』、思潮社、1990年)
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